望遠鏡の製作
口径20cmドブソニアンの製作
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作成:滝 敏美
2007年1月4日
口径20cmドブソニアン
20cmドブソニアンで撮影した月面写真
目次
1. はじめに
2. 仕様
3. 光学系
4. 鏡筒
4.1 鏡筒の製作
4.2 主鏡セル
4.3 斜鏡支持金具
4.4 接眼部
4.5 ファインダーと支持
4.6 鏡筒の組み立て
4.7 光軸調整
4.8 星像検査
5. 架台
5.1 ドブソニアン架台
1. はじめに
口径30cm,f/6.0 ドブソニアンを自作して10年以上使っていましたが,この望遠鏡はわたしには大きすぎて,使う頻度が少なくなってしまいました.天頂付近に向けると脚立が必要になりますし,重いので移動が面倒です.市が主催する天体観望会に30cmドブソニアンを持っていくのですが,子供にのぞかせるには脚立を使うのは危険です.
そこで,新しい望遠鏡を製作することにしました.わたしの自宅付近は光害がひどいので,主に惑星や月を観望することを使用目的とします.また,天体観望会で子供にものぞきやすいことも考慮しました.目標は以下のとおり.
- 天頂付近を見るのに脚立が不要なこと
- 良好な光学性能
- 容易に移動できるよう,軽いこと
- 堅牢なこと
- 簡単に組み立てることができること
- ドブソニアン式とするが,将来的には赤道儀にも改修できること
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2. 仕様
上の条件を満たす大きさを考えて,口径20cm,f/6.0のニュートン式反射としました.口径20cmあれば惑星や月はじゅうぶんよく見えます.主鏡と斜鏡はアメリカのメーカー Parks Optical から購入しました.Parks社の反射鏡はスカイ&テレスコープ誌のテストレポートでひじょうに良い評価を得ていましたので,この会社に決めました.価格は約300ドルでした.望遠鏡の仕様は以下のようになります.
- 口径20cm,f/6 ニュートン式反射
-- 鏡筒
........... 3点支持主鏡セル
........... 斜鏡支持ベーンは曲線
........... クレイフォード式接眼筒
........... 7x 50mm ファインダー
........... 木製
-- ドブソニアン式経緯台
........... Kriege, Berry共著 "The Dobsonian Telescope" の第13章を参考にした.
-- 重量
........... 鏡筒(ファインダーを含む):........ 7.8 kg
........... ドブソニアン架台:............................. 4.2 kg
........... 合計:..................................................... 12.0 kg
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3. 光学系
(1) 主鏡
- 口径 .................. 8.00インチ(203 mm)
- 焦点距離 ....... 48.7インチ(1237 mm)
- 口径比 ............. f/6.09
- 厚さ .................... 36mm
- 重量 ................... 2.63kg
- 製作 ................... Parks Optical
- 製品番号 ........ 864870627001281
(2) 斜鏡
- 短径 .................... 1.83インチ(46.5 mm)
- 厚さ ...................... 12mm
- 重量 .................... 0.060kg
- 製造 .................... Parks Optical
- 中央遮蔽 .......... 23%
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4. 鏡筒
4.1 鏡筒の製作
軽くて変形しにくい鏡筒を設計しました.3mm厚の合板を使った多角形(12角形)の筒としました.フレーム(枠)に板を張った航空機の胴体構造と同じ構造様式です.この構造は特別な道具を使わないでもできます.外径265mmで,長さ1300mmです.重量は2.5kgしかありません.もし,アルミ製の鏡筒にしたら,5.6kgにもなります(外径245mm x 厚さ2mm x 長さ1300mm).
完成した鏡筒(塗装後)
フレーム(枠材)は3分割です.内径は 240mmです.
板と枠.板の寸法は,幅70mm x 長さ1300mm です.
3枚の板と5つのフレームをエポキシ接着剤で接着します.この工法はボートの製作に用いられる「タック・アンド・グルー」と呼ばれる方法です.
さらに2枚の板を接着します.これで5パネル・シェルができました.下部の扉の位置にサブ・フレームを追加します.接着剤が硬化してから,扉の開口部を切り離します.
扉の開口部を切り取りました.
3パネル・シェルと4パネル・シェルを同じように製作します.3パネル・シェルと4パネル・シェルを接着して,7パネル・シェルができます.
7パネル・シェルと5パネル・シェルと扉ができました.
7パネル・シェルと5パネル・シェルを接着して筒にします.塗装を待つばかりになりました.軽くてじょうぶです.
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4.2 主鏡セル
主鏡セルの設計で大事なことは,支持方法と換気方法です.鏡に変形を少なくするために支持点の数と支持点の位置を適切に設計することと,鏡が外気温と早く平衡に達するようにセルを設計する必要があります.
主鏡セルは厚さ12mmの合板で製作しました.下の写真に示す円形の板は主鏡を取り付ける板で,3つの穴を開けて換気できるようにしてあります.三角形の板は鏡筒に取り付ける板です.これにも円形の穴があけてあります.主鏡は円形の板にシリコン系の接着剤(シーリング剤)を使って3点で接着してあります.この3点の支持点は主鏡の変形が最小になる半径40%の位置にあります.20cm鏡の厚さは36mmあり,3点支持でじゅうぶんなことを解析で確かめました.3組の押しネジ/引きネジで傾きを調整できるようになっています.板にはつめ付きナットを埋め込んであります.シリコン接着剤で鏡を取り付けることに不安を感じるかも知れませんが,わたしの30cm反射の斜鏡もシリコン接着剤で取り付けています.10年以上経っていますが,問題ありません.
主鏡セルの部品
主鏡セルを前から見たところ.穴の間にある3つの小さなくぼみがシリコン接着剤をつける点です.セルの重量は520グラムです.
組み立てた主鏡セルを後ろから見たところ.塗装前.
主鏡を取り付けたセル
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4.3 斜鏡金具
斜鏡金具は硬い木とアルミ板で製作しました.斜鏡を斜鏡ホルダーに取り付けるには,シリコン接着剤を使いました.斜鏡金具の重量は約120 gramsです.
塗装前の部品
斜鏡ホルダーを組み立てたところ
塗装前の曲線ベーン
調節ネジ部のクローズアップ.斜鏡ホルダーの3つのくぼみはシリコン接着剤をつける場所.
斜鏡を接着した斜鏡金具
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4.4 接眼部
簡単なクレイフォード式接眼部を製作しました.重量はわずか150グラムです.詳細は,"Poor Man's Crayford Focuser"(英語)の項を見てください.
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4.5 ファインダーとその支持
約40年前に購入した高橋製作所製の7x 50mmファインダーを使いました.3mm厚の合板を4枚貼り合わせてファインダーのサポートを製作しました.調節ネジのためにオニ目ナットを埋め込んであります.
7x 50mm ファインダーとサポート.合計重量は420グラム.
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4.6 鏡筒の組み立て
2003年12月29日に鏡筒を組み立てました.ファインダーとそのサポートをつけない状態での重量は6.0kgでした.
架台なしでのファースト・ライトは2003年12月30日.
ファインダーを取り付けた.
鏡筒の扉を開けたところ
鏡筒の扉を閉じたところ
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4.7 光軸修正
外径1.25インチ×長さ150mm のしんちゅう管でサイト・チューブ Sight Tube を製作した.前端に十字線を張ってある.
サイト・チューブを接眼部に取り付けたところ
サイト・チューブからのぞいたところ
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4.8 星像テスト
光学系の検査のために,2006年9月2日に北極星を使って焦点内外像の写真を撮影した(下の写真).
判定:
(1) 光軸がまだ少しずれている.
(2) わずかな過修正である.
撮影データ: 2006年9月2日,21h10m - 21h13m, September 2, 2006. 2xバーロー使用, Philips SPC900NC Webcam.
参考資料: H. R. Suiter著, "Star Testing Astronomical Telescopes - A Manual for Optical Evaluation and Adjustment," Willmann-Bell, Inc., 1994.
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5. 架台
5.1 ドブソニアン架台
ドブソニアン架台には12mm厚の合板を使った.高度ベアリングは直径550mmと直径150mmの円盤である.最初は片側だけに直径550mmの円盤を使い,反対側はボルトだけにする計画だったが,こうすると安定しなかったので,直径150mmの円盤を反対側に追加した.天頂に向けたときに接眼部の高さが1220mmになる.架台は2004年1月24日に完成した.
完成した20cmドブソニアン (1/2).
完成した20cmドブソニアン (2/2).
ロッカーとベース (1/2)
ロッカーの前部に接眼鏡載せ台と持ち運び用ハンドルをつけた.
ロッカーとベース (2/2).
ロッカーの下面にはメラミン化粧板を貼った.
最初はクリーム色の平滑なメラミン板だったが,メラミン板が削れて粉を出すようになり,動きがスムーズでなくなったので,2007年7月にメラミン板を「アイカ JI422B」に取替えた.これは,米国のドブソニアン架台で用いられている「エボニースター」のように表面がでこぼこしたメラミン板である.この改造により,動きがスムーズになった.「アイカ JI422B」が「エボニースター」の代用品となることがわかった.
ベースの上側.敷居すべりを貼ってある.
この敷居すべりもメラミン板を取り替えたときに「カグスベール」に替えた.
ベースの裏側
高度ベアリングの支えのテフロン・パッド.高度ベアリングがはずれないようにアルミ製のガイドをつけた.
高度ベアリング (1/2).
高度ベアリング (2/2).
高度ベアリングの取り付け剛性を高めるために,鏡筒との間に支持板を追加した.
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